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『ティア1』にならなくていいし、『にわか』でいい

ティアを定義する『格』というあいまいな概念

ラグビー日本代表は、プール戦で、ロシア、アイルランド、サモア、スコットランドに勝利し、史上初のベスト8入りを達成した。

特に、アイルランド、スコットランドの2カ国はワールドラグビー言うところのティア1(Tier 1=第一階層)に属しており、この2カ国を破ったことは、素晴らしい成果だ。本当に誇らしい。

では、日本は、この勝利によって、ティア1の国になれるのだろうか?

おそらく、なれない。

実は、ティア1国というのは、明確な定義があるわけでなく、強さはもちろんだが、歴史や、『格』というあいまいなもので決められている。

現在のティア1は、イギリスの4カ国とフランス、イタリアを含むヨーロッパの『シックス・ネーションズ』参加国と、南半球の『ザ・ラグビー・チャンピオンシップ』に含まれている、ニュージーランド、オーストラリア、南アフリカ、アルゼンチンの4カ国で構成されている。

すでに、日本のランキングは、現時点でも9位のスコットランドや、10位のアルゼンチン、12位のイタリアよりも上だし、ティア1昇格の資格があるような気がする。また、過去にはアルゼンチンが昇格したように、かならずしも絶対に昇格できない……というものでもないようだ。

しかし、そこにはやはり『格』というあいまいな基準があるし、そもそもティア1の10カ国のうちイギリス連邦の国が8カ国を占めており、英語を使わない国はフランスとアルゼンチン……というだけで、何をかいわんやというものだ。

ティアという仕組み自体がおかしい

では、日本は、なんとか提示される条件を満たし、ティア1に入れてもらうよう努力すべきなのだろうか?

ティア1国になると、ワールドカップの対戦に有利な日程が組めるし、そもそもワールドラグビーではティア1国の方が議決の際の票数さえも多いそうである。

しかし、その仕組み自体がおかしくはないだろうか?

まるで、20世紀前半の、宗主国と植民地のようだ。明治維新のあと、植民地にならずに済んだからと言って、宗主国側に立とうとした愚を彷彿とさせると言ったら言い過ぎだろうか?

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もちろん、『ティア』というシステムが存在する理由も分かる。ラグビーは番狂わせが少なく、フィジカル的に多くの試合を行うことが難しい。また、ご存じのように実力差の大きな試合を行うと途方もない差がついてしまって互いに得るものが少ない。そこに、ランキングとそれにおける試合制限というようなものが必要であることは分かる。

しかし、それは『ティア』などという階層社会的なものであるべきではないと思う。

日本はティア1国に格上げしてもらうのではなくて、ティア2の星として『ティア』という制度を壊すべきではないだろうか? あとに続く現在『ティア2』と呼ばれている国や、これからプレイヤー人口も増えていくアジア諸国のために、『格』などに左右されない平等な仕組みを提案することこそ日本のすべきことではないだろうか? ティア1に『上げてもらう』なんて、大昔の『名誉白人』白人のようで、大時代的だと思う。

ぜひ「ティア1にならなくてもいい、ティアという仕組みをなくそう」と声を上げて欲しい。

『にわか』と言わせたことこそを恥ずべき

ところで、私は『にわか』ファンだ。

父は大学時代からラグビーをして、その後も大学のラグビー部の顧問をしていたし、私も40年以上前、小学生の頃からラグビースクールに入って、中学でラグビー部を経験した(そして身体が小さかったので挫けた)ので、しばしばラグビー観戦はしていたが、今泉、堀越、吉田……あたりの時代から、2015の南ア勝利まで、ラグビー観戦からは遠ざかっていた。だから『にわか』だと思っている。

「僕は『にわか』でね」と言わざるを得ない雰囲気がある。

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「がんばって『にわか』じゃないファンになってね」なんて言われる。「トップリーグも、大学ラグビーも観てね」とか言われる(日本代表から好きになった人が観て、面白いかどうかは分からない)。「日本が敗退したあとの、準決勝、決勝を見ないと本物のファンじゃない」なんて言われる。

果ては使った絵文字のボールに白いストライプが入ってるだけで、鬼の首を取ったように「それはラグビーボールじゃありません!」と言われる。

違う! あなたたち『オールドファン』の圧力がイヤだから、『にわかです』とエクスキューズしているのだ。

ベテランファンは相手に「『にわか』です」と言われたら、言われたこと自体を恥じるべきだ。相手にエクスキューズを表明させる、新しいしいファンが入りにくい雰囲気を作っていたということなのだから。

そこで言うべきは「違いなんてない。僕らはOne Teamだ」ってことだと思う。

『脱にわか』を目指させるのではなく、エクスキューズなく誰もがラグビーを楽しめる世界へとベテランファンの方こそヒザを折って欲しい。

(村上タクタ)